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募集株式の発行(増資)の登記

募集株式の発行(増資)

            

そもそも、会社はなぜ増資をするのでしょうか?

増資とは会社の資本金を増やすことを言います。資本金とは、株主が出資した金額のことで、事業を運営していく上で必要な運転資金などとなるものです。

この資本金は主に、会社が株式を新たに発行し、その株式を購入する際に、株式引受人が金銭などの財産を払込した時に増加しますが、このような資金調達の方法を募集株式の発行と言います。他にも資本金が増える場合はありますが、一般的に増資とは募集株式の発行を指すことが多いでしょう。

会社が資金調達をする場合、銀行などから借り入れをして事業融資を受ける方法もありますが、募集株式の発行も資金調達の方法として広く用いられています。募集株式の発行により調達した金銭は、返済する必要がないという点で、他の資金調達とは明確に異なります。

一方で、株主へ金銭的な返済をする必要はありませんが、この株式を持つことによって、株主は会社の利益が上がれば配当金を受けたり、会社の経営に対して発言権を持ったりすることができます。

株式を発行することは返済の義務の無い資金の調達が可能になる反面、外部株主による会社への関与も大きくなりますから、しっかりとした資金調達のプランが必要です。募集株式による増資は、事業成長における最も重要な経営判断の一つと言えるでしょう。

            

増資をしたら必ず登記手続きをしましょう

会社の登記事項に変更があった場合は、一定期間以内に変更登記手続き行う必要があります。会社とは、本来実体のないものです。ですから、取引などの重要な局面において、会社の実在性が分からなければスムーズな取引ができません。

また、後にトラブルが生じた場合に会社の所在や役員が誰なのかが不確かであれば、取引の安全性を確保することもできません。そのため、何かしらその実在性を明確にする必要があります。

そこで会社登記の制度では、会社の取引上重要な事項を公示することにより、会社の信用維持を図り、混乱が生じることを未然に防止する機能があります。

会社登記については法律によって明確に、変更があった場合の手続きを義務化し、一定の期間内に登記手続き行うことを義務付けています。

            

もし増資の際に登記をしなかったらどうなるのでしょうか?

会社法では、会社登記事項の内容に変更が生じた場合、その変更日から2週間以内に登記を申請しなければならないと定められています。

この2週間の期限を過ぎた場合を一般的に登記懈怠といい、その後に登記の申請をした場合、代表者個人に対して100万円以下の過料の制裁が課される可能性があります。

過料ですので前科がつくことはありませんが、法人ではなく代表者個人の財産で支払う必要があります。これは、登記手続きを会社の代表者すなわち経営側が現状を正しく登記簿に反映させる義務を負っているためです。資本金に変更があった場合にも当然に変更登記義務があります。

なお、2週間を過ぎて申請した場合に制裁が課されるかどうかは、審査する裁判所の裁量となっているのが実情です。しかしながら、いつ誰に課されてもおかしくありませんので、登記懈怠には十分注意が必要なことに変わりはありません。なお、2週間を経過した後でも登記手続きは問題なく受理されます。

遅れればそれだけ過料の負担が大きくなる可能性が増しますので、義務期間内に登記は済ませるように心がけ、既に懈怠している場合でも早めに手続きを済ませてしまいましょう。

            

一般的な増資手続きの流れ(増資の決定〜払込まで)

増資の手続きでは、株主総会等により募集株式の内容を決定し、株式引受人が出資金を払い込む手続きが必要となります。

募集株式を発行するまでの会社の実態的な手続きでは、更に

➀「発行する募集株式の内容」を決定するための決議
➁「発行された株式の引受人へ株式をどれくらい割当するかの決議

の2つ手続きを実施する必要があります。

➀「発行する募集株式の内容」を決定するための決議

募集株式の内容の決定では

・今回新たに発行する株式の数
・1株当たりの払込金額、増加する資本金の額
・払込期日等

が決定事項となっています。

この決定は原則として株主総会※の決議によって行います。
※公開会社では取締役会の決議によることが原則となります。

➁発行された株式の引受人へ株式をどれくらい割当するかの決議

発行する株式の内容が決まったら、株式引受人を確定させる手続きとなりますが、この割当手続きにも方法が2通りあります。
一つは不特定多数の出資希望者から株式引受の申込を募り、その申込者の中から株式をどれだけ割り当てるかを決定する方法です。
もう一つは、特定の出資希望者と個別に引受ける株式の契約を結ぶ方法です。

実際、上場の前の知名度の低い段階では、不特定多数の出資希望者から株式引受の申込を募る方法は実用性に乏しく、大抵の募集株式の運用では、特定の出資希望者と協議を重ね、引き受ける株式を個別に確定させることが多いでしょう。

この引受人の決定は取締役会(取締役会非設置会社の場合は株主総会)の決議によって行います。このようにして、株式引受人を確定させる手続きを割当決議と言います。

割当決議を経た後は、株式引受人は払込期日に金銭等の払込を完了させる必要があります。これを済ませることにより、晴れて会社の株主となり議決権等の権利を行使することが可能となります。

            

増資時に行う登記の流れ

募集株式の実態的な手続きが完了したら、次は増資の登記手続きとなります。登記の申請は会社の本店所在地を管轄する法務局に行う必要があります。管轄を間違えると申請は却下されますので、申請先の管轄には注意しましょう。

この管轄は、例えば本店が新宿区内なら新宿出張所、渋谷区内であれば渋谷出張所のように、明確に分けられていますので適切な管轄を調べる必要があります。

会社登記の申請では、登記申請書という書類を管轄の法務局に提出する方法によって行います。この登記申請書には、募集株式により増加した「資本金の額」及び「発行済株式の総数」の他、会社の基礎情報など必要事項を記載します。

また、申請手続きでは、上記登記申請書に合わせて、「資本金の額」及び「発行済株式の総数」に変更があったことを証明できる書類を一緒に提出する必要があります。これらを添付書類と言います。

この添付書類には、主なものとして・募集株式の発行内容を決議した株主総会議事録・株式の割当を行った取締役会議事録(取締役会非設置会社の場合は株主総会議事録)・特定の出資者と交わした株式引受契約書が挙げられます。

添付書類が不足していたり、内容に不備があった場合、法務局より補正の指示を受けることになりますが、これに対応しないと手続きを進行してもらえませんので、適切な書類を準備する必要があります。

これらを合わせて法務局に提出し登記完了を待ちます。完了したら登記事項証明書を取得し、正しく増加内容が反映されていれば無事登記手続き終了となります。

            

増資の登記を自分で行うことは可能?

増資の登記手続き自分で行う場合、株式や資本金を始めとした会社の仕組についての一般的な理解がなければ困難を極めるのは間違いないでしょう。初めて増資の登記をするのであれば、かなり複雑な作業に戸惑うことは必至です。人によっては、自力で進めた場合1週間以上かかることもあります。

登記の手続きは、必要な書類一式を揃え、管轄する法務局の審査を受け、不備なく通す必要があります。申請書はどのように記載すればいいのか、収入印紙はいくらなのか、どこの法務局に提出するのか、申請書以外に必要な書類は何か、どの書類に何の押印が必要か、これらの情報はネットでも調べることは可能ですが、非常に膨大な情報となり、増資の手続きだけでも正確な知識を身に付けるのは困難です。

時間を掛けて調べても法務局の補正指示があれば、都度出向いて直す必要があります。実際にそれだけ手間のかかる作業でなければ司法書士に依頼する必要はありません。それでも、登記の知識は司法書士以外には本業で役に立つことはほとんどないでしょう。

ですから、どのタイミングで登記が必要かを把握しておく程度の知識があれば、それ以上に詳しくなる必要はないと言えます。自力で行うことは可能と言っても、必要以上に登記手続きに手間や時間が取られ本業に支障がでては本末転倒です。これらを踏まえた上で検討する必要があるのではないでしょうか。

            

登記を自分で行う場合のメリットとデメリット

メリット

・費用を削減できる
自分で登記手続きをする場合、司法書士に支払う報酬は発生しませんので、費用を抑えることができます。
申請内容自体に質や量を左右する要素はありませんので、同じ内容であれば費用を抑えることができるというのが最大のメリットと言えます。

デメリット

・手続きに時間を割く必要がある
人によっては増資の登記手続きに1週間程時間を割かれることもあるでしょう。
必要な書類は複数ありますし、記載内容も決まったフォーマットがあるわけではありません。
法務局とのやり取りや、手続きの流れを把握するだけでも想像以上に複雑な作業となります。

・法務局に出向くケースもある
法務局の審査は厳しいため、司法書士でも書類の不備で補正を受けることがあります。
補正とは法務局による書類審査上で不備があった場合の通知です。
補正通知があった場合は、内容によっては法務局に出向いて書類の内容を訂正する必要が出てきます。
法務局は意図的に駅から離れて設置されているため、管轄によっては半日作業となります。

・詳しく調べても本業には役立たない
登記手続きは専門性を極めており、経営者自身が登記手続きを行ったとしても、その後の本業ではほとんど使わない知識ばかりです。そのため、苦労して調べても見返りは非常に少ないと言えます。

・費用削減できるといっても頻繁に必要な手続きではない
会社登記の変更は頻繁に必要な手続きではありません。
そもそも会社の基本的なことが登記されているので、変更されないのが基本です。
ですから費用削減の効果としては微妙と言えるでしょう。

上記からわかるように、費用を抑える代わりに発生する手間をどうするか?ということがポイントです。
従来はこの手間の大きさや自分で本当にできるのかという不安を考えると、まるごと司法書士にお願いするというのは合理的な方法と言えます。